3月16日、ばんえい競馬の最高峰レース「第57回ばんえい記念」(BG1)が行われ、メムロボブサップ(牡9)が優勝した。
雪が降る中で行われ、馬場水分は1.3%。キンツルモリウチが競走除外となり出走馬7頭で争われた。今井千尋騎手は女性騎手初のばんえい記念騎乗となるはずだったが、お預けとなった。通算収得賞金1億円達成がかかり、ばんえい記念2年ぶり2度目の制覇を狙うメムロボブサップは、単勝オッズ1.2倍の1番人気に支持された。なお、メムロボブサップは騎乗予定だった阿部武臣騎手の負傷により渡来心路騎手へ変更となった。次ぐ2番人気は帯広記念を制したコウテイ、3番人気はコマサンエースだった。
レースは全馬が第1障害をクリアすると、コマサンエース、インビクタが先行し、その後ろにコウテイ、ダイリンファイターが続いた。メムロボブサップは中団後ろを進んだ。前半77秒でダイリンファイターが先に第2障害へ到達し、各馬がじっくりと溜める中、コマサンエースが挑戦を始めると、ほとんど同時にインビクタ、コウテイ、ダイリンファイターも挑戦を始め、ダイリンファイター以外の3頭は一腰でクリアした。一歩後ろで挑戦を開始したメムロボブサップも一腰でクリアし、前の馬らを追いかける形になった。メムロボブサップが残り30m手前でコウテイ、コマサンエースを捉えて先頭に立ち、そのまま止まらずに歩き続けて1着。2着にコマサンエース、3着にコウテイが入った。勝ちタイムは2分17秒5で、ばんえい記念史上最速での決着となった。
メムロボブサップは今シーズン重賞7勝を含む11戦10勝、重賞は通算23勝目。ばんえい記念は2年ぶり2度目の制覇となった。この勝利により通算収得賞金は1億135万7500円となり、2006年のスーパーペガサス以来19年ぶり史上8頭目となる1億円馬の仲間入りを果たした。渡来心路騎手はばんえい記念初挑戦初制覇、坂本東一調教師は調教師として3度目の制覇となった。

渡来心路騎手
「すごくほっとしていて、嬉しい。急遽騎乗が決まったが、本当に俺でいいのかなと思い、心臓がバクバクでプレッシャーが大きく、どうしようかなという感じだった。しかし、プレッシャーを感じすぎても仕方がないので、一周回ってやるしかないという気持ちだった。騎乗変更を見て騎乗を知り、騎乗が決まってからは短かったので何も準備は行わなかった。阿部騎手とのやりとりもなかった。雪は降ってきたが1トンという重量なので、焦らず騎乗しようと思った。強い馬で、武さん(阿部武臣騎手)が仕上げてくれていて、スタートした瞬間に完璧な馬だと分かったので、焦ることなく馬に任せて乗ることができた。ばんえい記念の騎乗は初めてで全く分からなかったので、一番レースのことを知っているボブの歩きたいように歩かせた。5年前に一度騎乗した時から強い馬だとは思っていたが、その時より断然強くなっていた。1トンなので慎重に乗ろうと思っていた。障害をうまく上がってくれれば下りてからもしっかり歩いてくれると思っていたので、焦らずに馬の呼吸を見ながら乗ることができた。雪が降っていることもあり少し速いペースかなとは思ったが、1トンなので大丈夫だと思った。第2障害はできれば一腰で上げたいと思っていたので、手前でしっかり息を入れることを意識して乗っていた。他馬が前にいても馬が完璧だったので焦ることはなかった。障害の下り口では勢いがあったので、勝てると思った。前の馬を交わした後も余裕がある感じだったので、このまま止まらないで行ってくれると思った。勝利した瞬間はすごく嬉しかった。武さんと坂本調教師、馬主さん、応援してくれるファンに感謝している。」
坂本東一調教師
「勝利した気持ちは考えていたが、心の中が曇って喋ることができないくらいの気持ち。帯広記念以降はここにチャンスを絞っていたので、前走のチャンピオンカップは少し無理をしたなという気持ちはあったが、後遺症も残らずここまで来られた。ほとんどは阿部騎手が努力をして仕上げてくれたので、すごく感謝している。ばんえい記念に向けては、馬の筋肉が痛まないような調教を行ってきた。阿部騎手が怪我をしたのは突然のことでパニックになった。渡来騎手は冷静に乗ってくれるタイプだと思い騎乗を依頼したが、今日も冷静な騎乗でその通りだったと思う。第2障害でチャンピオンカップのように膝を折りかけたら負けただろう。雪が降り軽くなったので、今まで苦しんでいない馬のスピードを心配したが、渡来騎手が冷静に騎乗した。ゲートの出方は馬が決めているが、渡来騎手は阿部騎手と違い手綱に力を入れて少し下げ気味だったので、今までとはゲートの出方が少しだけ違った。しかし、渡来騎手は冷静に対応したと思う。ボブサップの調子を見るため攻め馬は私(坂本調教師)が行い、渡来騎手はレース前一度もボブサップに触らずに乗った。渡来騎手にもどう仕上げたかは伝えておらず、馬は完璧だったのであとは乗り方次第だった。レース前はハナを引っ張るつもりだったが、『あ、違う』と感じた時、渡来騎手も気付いた。後方に位置を取ったのは冷静な判断だった。教科書通りではない、重賞を乗りこなす騎手の勘は素晴らしいものだったと思う。1億円ということは気にしていなかったが、放送が入って厩舎のスタッフ達はここを獲れば1億円だと言っていたが、『そこをまず考えるな』という一歩先を進む気持ちを持ち、1億円より一歩先を考えている。去年のばんえい記念の経験が生きたと思う。馬は冷静で、渡来騎手が止めようとした時に引っかかったら負けるということは馬の方が心得ている。普段の調教でも同じで、私の合図を待っている。これからも健康を保っていき、来年度は帯広記念に絞り、再びばんえい記念を目標にしたい。今日のボブサップに感謝しているし、ファンの応援にも応えてくれたと思う。」
☆レース映像
☆勝利騎手インタビュー
☆勝利調教師インタビュー


